発見された幻の大作

この作品は、長らく行方不明であったものですが、2016年、フランスで発見され、フランス・日本双方の記録の照合により松方コレクションであることが確認されたことから、松方家に返還され、2017年11月に国立西洋美術館の寄贈された作品です。本作品は、そのたどった運命から、半分近くが破損するなど、大きな損傷を受けており、国立西洋美術館では、作品そのものの修復を現在進めています。

デジタル推定復元プロジェクト始動

本プロジェクトは、修復中の作品や作品に使用された絵具の科学的データ、残された全体図を写したモノクロ写真、作家・作品に係る資料等を元に、最先端のデジタル技術やAI技術などを駆使して、在りし日の全体像をデジタル画像で推定復元し、展示公開することを目指すものです。生き生きとした素早い筆づかいや色彩表現などの特徴ゆえに、モネの作品の復元は困難を極めますが、国立西洋美術館では、消失文化財のデジタル再現の実績が豊富な凸版印刷株式会社と共同してこのプロジェクトに挑みます。
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クロード・モネ 《睡蓮、柳の反映》

本作品は、フランス印象派を代表する画家クロード・モネ(1840-1926)が、晩年の1916年に描いた、幅4メートルを超える大作です。
クロード・モネ 《睡蓮、柳の反映》
油彩・カンヴァス 199.3×424.4 cm
1916年
国立西洋美術館

2つの睡蓮

国立西洋美術館創設の基礎となった「松方コレクション」を築いた実業家・松方幸次郎が、1921年渡欧し、モネのジヴェルニーの家を訪れ、アトリエに残されていた作品群から20点近くを購入しました。その中には、モネの大作であるオランジュリー美術館の《睡蓮》の大装飾画の制作とも関連する2点の大画面の《睡蓮》があったことが初期の資料から知られていました。
1点は、現在、国立西洋美術館の代表的所蔵品である《睡蓮》(200.5x201cm)であり、もう1点は、その約2倍の横寸を持つ、今回デジタル推定復元に取り組む《睡蓮、柳の反映》です。この作品は2点目の《睡蓮》はおそらく第二次世界大戦時の疎開期に、湿気や水の被害を受けたと推測され、ひどく損傷したことから、戦後、接収松方コレクションの返還交渉においてフランス政府から日本政府へ引き渡される作品リストには含まれず、長らく所在不明の作品とみなされていました。

松方コレクションへの帰還

この作品は、戦時の接収作品を管理していたフランスの美術館局がかつて設置されていたルーヴル美術館で、近年カンヴァスの上半分が失われるという痛ましい状態で発見されました。幸いにも画面左下にはモネのサインと「1916年」という年記が残されており、フランス側と日本側の記録の照合によって、これが松方コレクションの一部であったことが確認されたことから、2017年11月、フランス政府から松方家に返還、そして松方家から国立西洋美術館に寄贈されました。松方コレクションの最後にして最大の作品の帰還であり、収蔵の際には、多くのマスコミで取り上げられ、大きな話題になりました。

国立西洋美術館と「松方コレクション」

国立西洋美術館は1959(昭和34)年、フランス政府から日本へ寄贈返還された「松方コレクション」を保存・公開するために設立されました。 「松方コレクション」を築いた松方幸次郎(慶応元年12月/1866年1月~1950年)は、明治の元勲で総理大臣も務めた松方正義の三男です。旧制一高の前身である大学予備門からアメリカに留学して、エール大学で法律の博士号を取得し、ヨーロッパ遊学を経て帰国後、父親の秘書官などを務めましたが、神戸の川崎造船所の創業者である川崎正蔵に見込まれ、1896年(明治29)年、同社の初代社長に就任しました。一時は神戸新聞、神戸瓦斯などの社長も兼ね、神戸商業会議所の会頭や衆議院議員にもなった人物です。
松方幸次郎が美術品の収集を始めたのは、第一次大戦中のロンドン滞在時のことです。大戦により造船で多大な利益を上げた松方は、1916(大正5)年から約10年の間にたびたびヨーロッパを訪れては画廊に足を運び、絵画、彫刻から家具やタペストリーまで、膨大な数の美術品を買い集めました。現在は東京国立博物館が所蔵する、パリの宝石商アンリ・ヴェヴェールから買い受けた浮世絵コレクション約8千点を含め、彼が手に入れた作品の総数は1万点におよぶと言われます。しかし、松方が美術にこれほどの情熱を傾けたのは、自らの趣味のためではありませんでした。彼は自分の手で日本に美術館をつくり、若い画家たちに本物の西洋美術を見せてやろうという明治人らしい気概をもって、作品の収集にあたっていたのです。

写真
株式会社川崎造船所(現川崎重工業株式会社)
初代社長 松方幸次郎
写真提供:川崎重工業株式会社

国立西洋美術館の誕生

松方は購入した作品を持ち帰り、美術館を建てて公開する準備をしていました。その美術館は「共楽美術館」と名づけられ、松方が敬愛する友人で美術品収集の助言者でもあったイギリスの画家、フランク・ブラングィン(1867-1956)が設計案を作り、東京の麻布に用地も確保されます。しかし、松方の夢だった「共楽美術館」が日の目を見ることはありませんでした。1927(昭和2)年の経済恐慌が状況を一変させたのです。メインバンクの十五銀行の休業によって川崎造船も経営危機に陥り、松方は社長の座を降りて自らの財産を会社の財務整理にあてます。日本に運ばれていた美術品は数度にわたる展覧会で売り立てられ、散逸してしまいました。
松方が収集した美術品のうち、かなりの数がヨーロッパに残されていましたが、ロンドンの倉庫にあった作品群は1939(昭和14)年の火災で失われ、現在ではその内容や数さえも確かではありません。一方、パリに残された約400点の作品は、リュクサンブール美術館(当時のフランス現代美術館)の館長レオンス・べネディットに預けられ、彼が館長を兼任したロダン美術館の一角に保管されていました。この作品群は第二次大戦の末期に敵国人財産としてフランス政府の管理下に置かれ、1951(昭和26)年、サンフランシスコ平和条約によってフランスの国有財産となります。しかしその後、フランス政府は日仏友好のためにその大部分を「松方コレクション」として日本に寄贈返還することを決定しました。このコレクションを受け入れて展示するための美術館として、1959(昭和34)年、国立西洋美術館が誕生したのです。

「松方コレクション展担当研究員による特別講演会」の開催が、7月19日(金)に決定しました!

国立西洋美術館の講堂で19時スタート予定です!
また、リクエストにお応えして、5万円コースと10万円コースにご支援くださった皆さまには、
お友だちやご家族と一緒に参加していただけるよう、2名様までとさせていただきます。
お楽しみに!

モノクロ写真 ―ガラス乾板の発見 その1―

今回の「デジタル推定復元」のキーとなったのが、欠損する前の《睡蓮、柳の反映》の全体像が写ったモノクロ写真の存在です。

2018年7月、フランスの国立建築文化財メディアテークの写真部門にて、かつてロダン美術館の礼拝堂にて保管されていた頃の松方コレクションの作品348点を撮影したガラス乾板が発見されました。その中には、《睡蓮、柳の反映》の全体像を写したものもあり、今回、欠損部を推定復元する大きな手掛かりとなっています。



ところで、このガラス乾板、作品だけでなく、いろいろと興味深いものが写り込んでいます。屋外で太陽の光の下で撮影されているのが分かりますし、右の端には、人の足が。大きな作品を撮影する間、固定するために支えていたのかもしれません。ロダン美術館の一角で撮影されたこの写真、この場所は、現在も柱や作品の下にのぞく階段は当時のままだそうです。

保存修復の基本方針について ―この作品をどう修復するか―

本プロジェクトは、《睡蓮、柳の反映》の失われてしまった部分も含めた全体像を、凸版印刷株式会社の協力を得てデジタルでよみがえらせるものですが、まずはみなさんに、モネが描いたこの《睡蓮、柳の反映》がどのような作品なのかを知っていただきたく、今回も引き続き作品本体の保存修復についてご紹介いたします。

《睡蓮、柳の反映》は、199.3×424.4cm 。とても大きな作品です。このような大きな作品で、かつ、これほど著しく損傷している作品の場合、通常は数年かけて保存修復作業が行われます。しかし、今回は、2019年6月11日(火)から開催される「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」で、みなさんにお披露目するのが最も相応しい作品として、約1年間という短い期間で保存修復作業にあたることになりました。
限られた期間で、作品にも、人にも安全に展示・鑑賞できるような状態にすることを第一の目標として保存修復作業はスタートしました。

「松方コレクション展」では、カンヴァスを再現したり、失われた部分を新たに描き足したりなどはせず、ありのままの状態で展示・公開する予定です。そうすることで、本作品が辿った歴史に思いを馳せたり、作品を今後も継続的に維持管理する重要性を再認識する機会となるでしょう。
また、将来、保存修復処置をし直す必要性が生じた場合のために、作品を傷つけることなく展示パネルから取り外すことができるよう、可逆性のある材料や方法を採用しています。展覧会での初公開、ご期待ください。

松方コレクション展:https://artexhibition.jp/matsukata2019/

発見時の作品の状態について -とにかく大変痛んでいるー

当プロジェクトは、失われた部分も含めて作品の全体像をデジタルでよみがえらせるものですが、作品本体の状況を簡単にご紹介します。

《睡蓮、柳の反映》は、2016年にフランスで紙筒に巻かれた状態で発見されました。開梱・点検され、その後、裏面から画布の裂けを紙製の粘着テープで留め、表面の絵画層が剥離しそうな部分には薄い和紙で保護をするなど、輸送に耐え得るだけの簡易処置を施され日本へ到着しました。




作品が国立西洋美術館に到着した後、作品の保存修復処置を行うために、まずは現状把握のため詳しい状態調査を行います。

もともとは木枠に画布を張ったカンヴァスに描かれていましたが、木枠は現存しておらず、画布のみとなっていました。画布はかなり脆弱化しており、残存している部分の先端は絵具層が剥落(はくらく)して特に不安定な状態でした。また、欠損部境界付近の裏側には、カビ跡や、湿気や水気による染みもみられるなど、一言でいえば、大変傷んでいる、という状況で早急な保存修復処置が求められました。






次回は、保存修復の方針についてお話します。

いよいよです!

国立美術館のクラウドファンディングがスタートしました!
第1弾プロジェクトは、国立西洋美術館所蔵、クロード・モネ作《睡蓮 柳の反映》のデジタル推定復元プロジェクトです。

プロジェクトの進捗状況は、今後定期的にアップしていきます。

60年ぶりに発見されたモネ幻の大作は、いったいどのような作品だったのか。その全貌を推定し復元していきます。
私たちと一緒に、デジタル推定復元プロジェクトを盛り上げましょう!
  • 2019/04/22

    そらいろ さん

    dummy
    とても意義ある、そしてロマンティックな挑戦だと思います。
    修復後の姿に出逢う日が待ち遠しいです!応援しています
  • 2019/04/21

    山下 瑛梨佳 さん

    dummy
    モネの幻の大作が蘇るということで、とても夢のあるプロジェクトだと思いました。
    この目で復元された、クロード・モネ《睡蓮、柳の反映》が見られるのを心待ちにしております。
  • 2019/04/16

    深井 彰久 さん

    dummy
    素晴らしいプロジェクトだと思います。
    失われた作品を早く目にしたいです!
  • 2019/04/14

    植田幸宏 さん

    dummy
    このようなステキなプロジェクト立ち上げていただきありがとうございます。
  • 2019/04/12

    小野寺佳枝 さん

    dummy
    いくつかのモネの作品を拝見してきました。復元の大変さは計り知れません。微力ですが協力させていただきたいです。
    復元された作品をこの目で観られる事をたのしみにしております。
  • 2019/04/11

    印象派ファンとして さん

    dummy
    大きな損傷が痛々しいようですが、最先端技術と愛情と熱意でまだ見ぬモネの睡蓮の一枚に
    お目にかかれる日が待ち遠しいです。頑張ってください。
  • 2019/04/10

    taezou さん

    dummy
    松方コレクションの数奇な運命に思いをはせて、今日も常設展を見てきました。
    大戦を耐え忍んで日本にやってきた絵画を見るたびに胸がいっぱいになります。
    松方の思いを、よみがえらせるプロジェクトを応援しています。
  • 2019/04/09

    南郷 佑奈 さん

    dummy
    本復元プロジェクトに参加できることを大変光栄に思います。
    復元された新しい「睡蓮」に会えることを楽しみにしています。
  • 2019/04/04

    Y.S さん

    dummy
    どのような全体像が現れるのか、楽しみにしてます!
  • 2019/04/03

    島 明子 さん

    dummy
    モネの絵画がとても好きなもので、この絵が発見されたニュースを見たときは非常に驚きました。破損は残念ですが、それ故、復元はとても楽しみです。ご苦労は多いと思いますが、皆さまの技術で少しでも元の姿に近づきますよう期待しております。
  • 2019/04/03

    渡辺 由貴子 さん

    dummy
    プロジェクトに、間接的にですが参加できることを嬉しく思います。作品に会えることを楽しみにしています。
  • 2019/03/29

    国立花子 さん

    dummy
    西洋美術館にもう一つ睡蓮が増えるなんて、素敵ですね!
  • 2019/03/26

    小林考行 香織 さん

    dummy
    このような素敵なプロジェクトを応援させて頂けることを大変光栄に思います。
    ご成功をお祈りしています。
  • 2019/03/21

    清水 倫 さん

    dummy
    名画の復活を楽しみにしています。
  • 2019/03/18

    田中えりか さん

    dummy
    常設展、企画展ともにいつも楽しませていただいています。
    本クラウドファンディングを通じて、また新たな作品に出会える日が待ち遠しいです。
  • 2019/03/15

    荒木克典 さん

    dummy
    モネの作品が復元されるのを楽しみに待っています。頑張ってください!
  • 2019/03/15

    船見 正範 さん

    dummy
    クロード・モネの美しい作品の復元に携われるのは、とても嬉しいです。
    こうした機会を作っていただいてありがとうございます。
    復元プロジェクトチームの皆様の素晴らしいワークを期待、応援しています。
    復元された睡蓮と対面できる日がとても待ち遠しいです!頑張ってください!